まずは、「自由エネルギー原理」の名前の元になったヘルムホルツの自由エネルギーが何だったか、調べてみました。
実は40年以上前、私は物理学科の学生でしたが、その頃、熱力学がよく分からなかった記憶があります。それで今でも不得意感があるのですが・・・・・以前、ヨビノリ先生のYouTube、【大学物理】熱力学入門⑤(ヘルムホルツの自由エネルギー):を見た時に理解出来たような気がしたので、今回それを参考にしました。
熱力学の第2法則であるエントロピー増大の法則では、孤立系での自発的な変化はエントロピーが増大する方向に変化する、ということでした。それでは、温度一定、体積一定の条件で、外部と熱のやり取りが出来る(つまり孤立していない)系の場合、変化の方向をどうやって知るか、という問題を考えてみます。
この系とその外部環境を合わせて全体でみれば、それを孤立系と見なすことが出来ます。そこで、この全体のエントロピーが増大する方向に変化は進むのでした。ここで系のエントロピーの変化を、外部環境のエントロピーの変化をと表すならば、
(1)
となるはずです(そして、系と外部環境を合わせた全体が準静的過程の時のみ等号が成り立ちます)。しかし、外部環境のエントロピーの変化を直接計算することは大変です。これを、今注目している系の情報だけで表すことが出来ないか、ということが考えられます。そして、これは次のように遂行されました。
変化によって系が外部環境から熱を受け取ったとします。これは外部環境から見たら熱の変化はとなります。外部環境は平衡状態になっていて、かつ巨大であると仮定しているので、熱を受けても外部環境の温度は変化しません。このため外部環境の変化は準静的過程となり、エントロピーの式は等号が成り立って
(2)
となります。ここで、は温度を表します。系の温度も外部環境の温度も等しくです。今、温度は変化しないと仮定しているので、
となり、
(3)
となります。これを(1)に代入すると
(4)
となります。ここでなので式(4)の両辺にを掛けても不等号の向きは変わらず、
(5)
となります。
さて系について熱力学第一法則を考えると、
(6)
ただし、は内部エネルギーを、は系に与えられた仕事を表します。今は体積一定を仮定しているのでとなり、
(7)
となります。これを式(5)に代入して
よって
(8)
ここで、
(9)
と置くと、温度が一定であることに注意すれば
(10)
となります。この式(9)で定義されるが、ヘルムホルツの自由エネルギーであり、式(10)は、自発的変化はヘルムホルツの自由エネルギーが減少する方向に進む、ということを表しています。
フリストンの定義する自由エネルギーは上のものとは異なりますが、脳は自由エネルギーを減らすように動作する、という彼の主張は、等温等積の条件の系はヘルムホルツの自由エネルギーを減らすように変化する、というヘルムホルツの理論をなぞったものなのでしょう。